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スキが欲しくて、好きが見えなくなった
理容室の信用は、一括払いで買えるものじゃない
いつもありがとう
カットの向こう側 ー神戸理容館 最後の365日
昭和の商店街に、ひっそりと佇む理容室「神戸理容館」(カンベリヨウカン) 親子ニ代にわたって営まれてきたこの店も、時代の流れには逆らえなかった。
大型チェーンや低価格サロンの進出、SNS時代の“見せる理容”への移行、そして高齢化──。
職人も減り、妻も亡くし、残された椅子は三脚。
店主・神戸雅彦(59)は「そろそろ潮時か」と、静かに閉店を考えていた。
そこへ、都会で理容師として働いていた息子・亮(31)が突然帰郷する。
「店をリニューアルしよう」 「変えることで、残せるものがあるはずだ」 しかし、父の返事はそっけない。
「このままで、ええんや」 伝統と革新。 職人気質とマーケティング感覚。
何より、長年すれ違ってきた父と息子の心は、すぐには交わらない。
そんな中、常連客のひとりが「これで最後になるかも」と呟いたことで、亮はあらためて問い直す。
この店が、誰にとって、どんな意味を持っていたのか──。
椅子に座る人の数より、 その椅子に込めた想いの深さで、物語は静かに動き出す。
◆ 登場人物紹介
● 神戸 雅彦(かんべ まさひこ)59歳 理容室「神戸理容館」二代目店主。生真面目で無口、典型的な“昭和の職人”。 若い頃は何人もの職人を育て、技術に誇りを持ってやってきたが、今は一人で店を切り盛りする日々。 妻・加代を病気で亡くし、心の一部が欠けたまま、店の継続に疲れを感じている。 流行やSNSを信じておらず、「変えること」に警戒感が強い。
● 神戸 亮(かんべ りょう)31歳 雅彦の息子(1人息子) 都会の人気理容室でスタイリストとして活躍していたが、突然帰郷。 父に認められなかった過去を乗り越えるように、“変革による継承”を提案する。 技術よりも顧客体験、インスタやLINE公式を使った発信など、現代的な戦略に精通。 だが、親父の「背中」にはずっとコンプレックスがある。
● 藤川 一郎(ふじかわ いちろう)60歳 神戸館の常連客。 近所で小さな仕立て屋を経営している。 商店街の衰退を横目に、どうにかやりくりを続ける 雅彦の誠実な仕事ぶりにも、亮の前向きな姿勢にも共感し、二人の橋渡し役になる。
● 神戸 加代(かんべ かよ)享年56歳 雅彦の妻。 既に他界しているが、店の空気や常連客の記憶の中で今も生きている。 接客が得意で、顔剃りや白髪染めのサポートなどを笑顔でこなしていた。 亮が小さな頃に「お店を手伝っている母の姿」が、彼にとっての“原風景”でもある。
◆ 舞台:理容室「神戸理容館」 立地:地方都市の寂れかけた商店街の一角にある、築60年の自宅兼理容室。
内装は昭和感が漂い、壁には少し色あせたポスター。
入口のガラスには「予約優先」の貼り紙があり、常連がふらっと立ち寄る空気感が残っている。
利便性やデザインでは新しい店に勝てないが、「変わらない安心感」を求めて通う客も多い。
※私の実家が理容室、もし継いだらどうなってたか?を想像して言葉にしてみました。 多少盛っています。フィクションです。